はじめに
いつもグルーヴ温泉をご覧頂きありがとうございます。
普段は楽曲そのものにフォーカスをあて、主観によって好き勝手にレビューしていますが、今回は趣向を変え、客観的データから読み解く新しい企画をしてみたいと思います。
日頃から色々なジャンルに浮気しがちですが、やはり本命は GANGSTA RAP ということで、「GANGSTA LAB」と銘打ってみました。(ラヴではありません、ラボ=研究室ですよ)
当研究室の目的は、ずばりGANGSTA RAPの「ランキング」と「ビジュアライズ」です。
- ランキング
GANGSTA RAP の世界では、流通の関係でなかなか知られていない名作が無数に存在しますが、表世界での知名度を度外視した真の意味での実力ランキングを明らかにすることを目指します。 - ビジュアライズ
GANGSTA RAP のマーケットはその掴みどころの無さから全貌が掴みにくく、「秘境」「沼」と言われることも多いですが、視覚的に捉えられるようにすることを目指します。
具体的には、GANGSTA RAP TOP 10000 ランキングを作成し、その中身を可視化していきます。
それでは、そのための考え方・アプローチについて下記で説明していきます。(少々理屈っぽくてつまらない話なので、興味のない方は読み飛ばして頂いて結構ですよ)
ランキング
評価基準
当研究室のひとつ目の目的は、表世界での知名度を度外視した真の意味での実力ランキングを明らかにすることです。
一口にランキングと言っても、何を評価基準にするかによって結果は異なりますが、当研究室では、ランキング作成のための評価基準を「掲載数」と「媒体数」としました。
- 掲載数
GANGSTA RAP 関係の媒体への掲載回数 - 媒体数
掲載された媒体の種類数
つまり、「どれぐらいの種類の媒体に、どれぐらい多く掲載されたか」によって、順位付けを行うことにしました。
評価方法
評価方法の全体像は下図の通りです。以下で詳しく説明していきます。
調査
まずは、市場に存在する作品の全容を把握するための調査を行いました。
少し古いですが、筆者が2019年に調査したデータを土台に使用しています。調査対象媒体は下記の通りで、それぞれの媒体への掲載数が前述の「掲載数」を、小分類にある(1)〜(7)が前述の「媒体数」を表しています。掲載総数は152915件でした。
- 2019年10月時点で筆者が把握できた GANGSTA RAP 界隈の国内外67媒体を参照させて頂きました。
※この時点で閉鎖されていた媒体、これ以降に立ち上がった媒体は含まれません
※一部、右クリックが禁止されていたサイトは残念ながら除外しています - 同一作品が同一媒体内または複数媒体に重複して掲載されている場合、それぞれを1作品としてカウントしています
- 作品数とは、アルバムやシングルなどの形として存在するモノの数を指します
- INDIE R&B や SOUL は今回の調査対象から除外しましたが、一部、残っている場合もありますのでご了承ください
集約
上記152915件のデータには同一タイトルの重複があるため、データクリーニングのために重複を統合し、70455タイトルに集約しました。
この際、「掲載数」について、大分類「網羅系媒体」(Discogs, The Good Ol’ Dayz, Rap Music Guide)については、プレス(国/時期)やメディア(CD/TAPE/VINYL)が違うだけでも「それぞれ1件」としてカウントされており、真の実力とは関係ないため、「一律1件」に補正しました。
例えば、同一タイトルにつき「CD」「TAPE」「VINYL」の3種類が存在する場合、掲載数は3件とカウントされていましたが、1件に補正しました。
順位付け
上記70455タイトルに順位付けを行いました。
順位付けの方法としては、まず「掲載数」が多い順に並べ替え、次に、同じ「掲載数」であれば「媒体数」が多い順としました。つまり、シンプルに「掲載数」が多いタイトルが上位に順位付けされることになります。(「掲載数」と「媒体数」の掛け合わせでスコア化する方法も考えましたが、わかりやすさを重視しました)
下図はその結果で、縦軸に「掲載数」、横軸に「媒体数」を置いた分布を表しており、「累計」の列が大まかな順位を表しています。
ご覧の通り、11025位以下のタイトルは、1つまたは2つの媒体にしか掲載されていないことがわかりました。これはおそらく、網羅性に特化したデータベースサイトにしか掲載されていないということを意味しています。
つまり、キリ良く10000位ぐらいまでが現実的に機能し得る真のランキングであると考え、GANGSTA RAP TOP 10000 として、深掘りしていくことにしました。
ビジュアライズ
調査基準
当研究所のもうひとつの目的は、「秘境」「沼」と言われることが多い GANGSTA RAP マーケットについて、視覚的に捉えられるようにすることです。
そのためには、TOP10000の各タイトルについて「網羅的」に把握することが必要と考え、5W1Hのフレームワークに基づき下記の項目を調査しました。
- When:リリース年
- Where:産地(国 > 地域 > 地区 > 州 > 街)
- Who:アーティスト名
- What:作品タイトル
- Why:媒体数(順位の根拠)
- How:掲載数
調査にあたっては、各種データベースサイト(Discogs, The Good Ol’ Dayz, Rap Music Guide)を中心に、各種ショップやブログなどを参考にしました。できる限り確からしい情報を掲載するよう努めましたが、完全な正確さは保証できませんのでご理解ください。
各調査項目の詳細は下記の通りです。
調査項目
リリース年
リリースされた年です。
なお、同一作品に複数プレスや再発盤がある場合、最も古いと思われるものを採用しています。
産地
作品の産地です。
まず国を調査し、それがアメリカ合衆国である場合、州・街まで調査しています。さらに、アメリカ合衆国国勢調査局による地域分類(リンクはWikipediaに飛びます)(U.S. Census Bureau Regions and Divisions.)を用い、下図の通り4つの地域(Region)と9つの地区(Division)に分類しています。
- 4つの地域(Region)
- 9つの地区(Division)
なお、アーティストが産まれた地域と育った地域が異なる場合、作品リリース時に活動していたと思われる地域を優先しています。
また、地域が異なるアーティスト同士のコラボ作品や、地域横断的なコンピレーション作品、データベース間で情報が異なる場合などはデータブランクにしています。
アーティスト名
アーティスト名です。
なお、同一アーティストの表記違い(例:2-11 と Two-Illeven)については、厳密な統合処理は行っていません。
また、コンピレーションについては、明確に「VARIOUS」と表記している場合もあれば、「〜 Records Presents」がアーティスト名になっている場合もあります。
作品タイトル
作品タイトルです。アルバム名、またはシングル名を指します。
なお、メディア違い(CD/TAPE/VINYL)までは区別していません。
媒体数
下記7媒体のうち、何種類の媒体カテゴリーに掲載されたかを表しています。
- Discogs
- The Good Ol’ Dayz
- Rap Music Guide
- ブログ
- WEBショップ
- 実店舗
- GANGSTA LUV
掲載数
媒体への総掲載数です。
なお、前述の通り、網羅系媒体(Discogs, The Good Ol’ Dayz, Rap Music Guide)への掲載数は「1」に補正しています。
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熱海出身の元DJ。2000年頃から掘り続けてきた"G"な音楽を紹介します。GANGSTA RAP、SOUL、FUNK、R&B、JAPANESE CITY POP 等、定番から知られざる名曲まで惜しみなく公開していきます。掘れば掘るほど湧き出る"G"の温泉を、ごゆっくりお楽しみください。
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