【GANGSTA LAB】GANGSTA RAP TOP 10000!ランキング編(TOP 100~11)

はじめに

お待たせしました。ランキング編の第19回目です。

定義編ビジュアライズ編をまだご覧になっていない方は、是非一度ご覧くださいね。

それでは行ってみましょう。

ランキングの読み方

ランキングの読み方は上図の通りです。各項目の詳細は定義編をご覧ください。

なお、基本的には「掲載数」と「媒体数」により順位付けをしていますが、同じスコアだった場合には下記の要領で機械的に処理しています。

  1. 掲載数が多い順
  2. 媒体数が多い順
  3. アーティスト名(アルファベット順)
  4. リリース年(早い順)
  5. 作品タイトル(アルファベット順)
  6. 国名(アルファベット順)
  7. 州名(アルファベット順)
  8. 街名(アルファベット順)

不明な情報はブランク「-」となっています。詳細をご存知の方がいらっしゃいましたら、情報提供頂けますと幸いです。

それではランキング本体を見ていきましょう。

TOP 100〜91

ついにTOP100に入りました。紹介したい作品だらけなのですが、これまで通り10位ごとに1作品ずつピックアップしていきますね。

まずは90位台です。

注目は91位にランクインした SUMTHIN SERIOUS『Keepin It Green』です。

1997年 カリフォルニア州リッチモンド産、キモカワな虫のロゴが印象的なMOJO PRODUCTIONS による人気盤ですね。

とにもかくにも「Forever My Bitch」でしょう。あろうことか「JODECI – Forever My Lady」を大胆に替え歌した有名曲ですね。

今回、記事を書くにあたって改めてリリックを調べたのですが、女性蔑視も甚だしいとんでもないことを言っています。曲調から、長年、せいぜい親しみを込めた「Bitch」の意味だろうと思って聴いていましたが、正直、幻滅しました。

これまでは、言葉がわからないからこそ「意味に縛られず音楽そのものを楽しめる」と考えてきましたが、少しは意味にも向き合わないといけないのかもしれません。

00100 – VARIOUS『Southern Xxx-Posure』1998(US > – > – > – > -)〔1,0,0,4,1,27,3/↔︎5,↕︎36〕
00099 – I.F.A.『International Family Affair』1994(US > West > Pacific > California > Stockton)〔1,1,1,13,1,19,0/↔︎6,↕︎36〕
00098 – CRIMINAL “E” & UNDERGROUND SAM『N G’S We Trust Who U Trust?』1997(US > South > East South Central > Tennessee > Memphis)〔1,0,1,5,1,25,3/↔︎6,↕︎36〕
00097 – BLACKJACK『Addicted To Drama』1996(US > West > Pacific > California > East Palo Alto)〔1,1,0,5,2,26,1/↔︎6,↕︎36〕
00096 – PROPHETS OF RAGE『No More Patience』1995(US > West > Pacific > California > Richmond)〔1,1,1,8,1,22,2/↔︎7,↕︎36〕
00095 – PLAYAZ TRYNA STRIVE『All Frames Of The Game』1996(US > West > Pacific > California > Vallejo)〔1,1,1,7,4,21,1/↔︎7,↕︎36〕
00094 – NONFIKTION『Creative Differences』1996(US > West > Pacific > California > Sacramento)〔1,1,1,11,2,18,2/↔︎7,↕︎36〕
00093 – MR. SLIM THE GHETTO MESSIAH『Ghetto Tears』1998(US > South > West South Central > Louisiana > New Orleans)〔1,1,1,1,4,23,5/↔︎7,↕︎36〕
00092 – BLACK MOPHIA CLAN『To Be Me』1998(US > South > West South Central > Louisiana > Monroe)〔1,1,1,4,1,23,5/↔︎7,↕︎36〕
00091 – SUMTHIN SERIOUS『Keepin It Green』1997(US > West > Pacific > California > Richmond)〔1,1,1,6,5,23,0/↔︎6,↕︎37〕

TOP 90〜81

続いて80位台です。

注目は87位にランクインした FAT PAT『Ghetto Dreams』です。

1998年 テキサス州ヒューストン産、惜しくもこの作品がリリースされる直前にR.I.P. してしまったベテランによる人気名盤ですね。

ブリブリのベースが効いた貫禄漂う「Superstar」や、煌びやかな高音シンセとRONNIE SPENCE を迎えた真夜中濃厚チル「Peepin’ Me」が特に素晴らしいです。

いずれも西の作品でも使われる典型的な音ですが、使い方によってここまで雰囲気が変わるのかと、初めて聴いたときには衝撃を受けたものです。

その違いは何なのかは今後の研究対象として非常に興味深いのですが、少なくとも本作が南部G-FUNKの古典的名盤なのは間違いなさそうです。

00090 – S.S.P.『Tales From Tha Southside』1996(US > South > East South Central > Mississippi > Tupelo)〔1,0,1,7,3,23,2/↔︎6,↕︎37〕
00089 – 5TH WARD JUVENILEZ『Deadly Groundz』1995(US > South > West South Central > Texas > Houston)〔1,1,1,6,1,27,0/↔︎6,↕︎37〕
00088 – MASTER P『The Ghettos Tryin To Kill Me!』1994(US > West > Pacific > California > Richmond)〔1,1,1,8,5,20,1/↔︎7,↕︎37〕
00087 – FAT PAT『Ghetto Dreams』1998(US > South > West South Central > Texas > Houston)〔1,1,1,3,7,20,4/↔︎7,↕︎37〕
00086 – BIG BUR-NA『The Daze Of Bur-Na』1995(US > South > West South Central > Oklahoma > Tulsa)〔1,1,1,5,2,26,1/↔︎7,↕︎37〕
00085 – BIG DOG『Call It What’Cha Want』1995(US > Midwest > East North Central > Michigan > Detroit)〔1,0,0,8,1,26,2/↔︎5,↕︎38〕
00084 – MO B. DICK『Gangsta Harmony』1999(US > South > West South Central > Louisiana > New Orleans)〔1,1,1,4,2,29,0/↔︎6,↕︎38〕
00083 – G-SHORTIES『44 Ways』1996(US > South > South Atlantic > Florida > Miami)〔1,1,0,3,3,28,2/↔︎6,↕︎38〕
00082 – FO’ CLIPS ECLIPSE『Just Be Thankful』1995(US > West > Pacific > California > Compton)〔1,1,1,4,4,27,0/↔︎6,↕︎38〕
00081 – Y-D『Give It Up To The G’S』1996(US > West > Pacific > California > Oakland)〔1,1,1,13,1,19,2/↔︎7,↕︎38〕

TOP 80〜71

続いて70位台です。

注目は76位にランクインした GOSPEL GANGSTAS『Do Or Die』です。

1995年 カリフォルニア州コンプトン産、GはGでも Gospel なクリスチャンラップグループですが、オリジナルメンバーはむかしクリップス・ブラッズにいたという筋金入りの元ギャングさんです。

実は6666位でも ORIGINAL GOSPEL GANGSTAZ「Do Or Die」(注:本作と同年にリリースされたリイシュー盤。名義も変わっている。)として4票を獲得しているので、実際にはもう少し上のランクになります。

創設者の MR. SOLO による楽曲がとにかく素晴らしく、「WHISPERS – And The Beat Goes On」ネタの晴天ドライブ「O Double G’s Go On」と、ひたすらに気持ち良いサンセット潮風哀愁チル「Backslider」の2曲は群を抜いています。

何気に SOUTH CENTRAL CARTEL の PRODEJE による「SOS BAND – No One’s Gonna Love You」ネタの真夜中哀愁ドライブ「West Coast Roc」なんかも良い感じで、抜かりがありません。

彼らのようにギャングの抗争やゲットーライフによって死生観が変わりクリスチャンに目覚めるアーティストは一定数いるようですが、ギャングもクリスチャンもここ日本ではなかなかリアリティを持って感じることはできませんね。

本作には「PARENTAL ADVISORY」マークが無く、ネイティブなら一聴して違いがわかるのかもしれませんが、我々日本人は一緒くたにそれらしいサウンドで一括りにし、このように平気で GANGSTA RAP と並列の文脈で語ってしまいがちです。

言葉がわからないからこそ「意味に縛られず音楽そのものを楽しめる」ことは素晴らしいことですが、いちリスナーとして最低限の分別・敬意・マナーは備えておきたいですね。

00080 – PSYCHO『Ballin’ 4 Life』1997(US > West > Pacific > California > San Francisco)〔1,1,1,10,3,21,1/↔︎7,↕︎38〕
00079 – GUERILLA MAAB『Rise』1999(US > South > West South Central > Texas > Houston)〔1,1,1,3,4,27,1/↔︎7,↕︎38〕
00078 – 2-DEF『Str-8 Doin Tha Fool』1997(US > South > West South Central > Texas > Houston)〔1,1,1,4,2,27,2/↔︎7,↕︎38〕
00077 – 187 FAC『Fac Not Fiction』1997(US > West > Pacific > California > Hayward)〔1,1,1,7,3,24,1/↔︎7,↕︎38〕
00076 – GOSPEL GANGSTAS『Do Or Die』1995(US > West > Pacific > California > Compton)〔1,0,1,4,4,29,0/↔︎5,↕︎39〕
00075 – DJ SCREW & THE SCREWED UP CLICK PRESENTS DEAD END ALLIANCE『Screwed For Life』1998(US > South > West South Central > Texas > Houston)〔1,0,0,2,2,32,2/↔︎5,↕︎39〕
00074 – THE BALLERS『A Day Late And A Dollar Short』1997(US > South > South Atlantic > Florida > Miami)〔1,1,1,4,2,30,0/↔︎6,↕︎39〕
00073 – SOUTH CIRCLE『Anotha Day Anotha Balla』1995(US > South > West South Central > Texas > Houston)〔1,1,1,7,1,28,0/↔︎6,↕︎39〕
00072 – PLAYA G『U Not My Lady』1998(US > South > East South Central > Tennessee > Memphis)〔1,1,1,9,1,25,1/↔︎7,↕︎39〕
00071 – NEW BREED OF HUSTLAS『Streetz Got Me Gone』1994(US > West > Pacific > California > Riverside)〔1,1,1,2,3,30,1/↔︎7,↕︎39〕

TOP 70〜61

続いて60位台です。

注目は61位にランクインした SEVEN『Seven』です。

1997年 カリフォルニア州ロサンゼルス産、G-LUV誌ノーマーク、唯一作にして詳細不明ながら、数々の MIX やイベントでプレイし尽くされたある1曲のためにGフリークの中では広く知られる人気盤です。

その1曲とは、サンセットクルーズによく映えるできすぎた爽やかトロピカルレイドバック「Jewel」で、2024年現在も衰えることを知らずまさに宝石のような輝きを放っています。

当時は情報が少なくチカーノ説まで飛び交っていましたが、現在の Discogs では比較的最近と思われる写真が見られ、その説は否定されそうです。

また、楽曲からして華奢でメロウな人物像を描いていたのですが、SEVEN の名前の由来は銃撃を受けて7日間昏睡状態に陥っていたことからきているそうで、意外にもタフなお方だったんですね。

さらには、キーボード/ベース/ギターを担当された KEITH STERLING 氏はレゲエ畑のお方だったり、フォトグラファーは MICHAEL NAKAYAMA 氏なる日系人と思われるお方だったり、かの「Jewel」のフィメールヴォーカルのひとり DORI は SOUTH CENTRAL CARTEL や YO-YO の作品にも参加しているお方だったりと、長年築いてきた幻想が容赦なく崩れ去っていきました。

今は本当に便利な時代で、それなりにマイナーな作品でもネットを開けばある程度の情報は簡単に見つけられます。さらには、知らない楽曲も YouTube でたやすく試聴できますし、ましてやサブスクなら所有する必要すらなく既に手元にあるという始末です。

その反面、未知の音楽を求めて書籍を読み漁ったり、1日中ショップに入り浸って店員さんと仲良くなったり、その流れでイベントに行ったり出たり、そこで知り合ったコレクターさんのお宅に遊びに行ったり、ときどきハズレ盤を引いたり・・・という楽しみは少なくなってしまいました。

今よりも情報が少なかったからこそ人々の想像力によって唯一無二の輝きを放ち続けられた、儚い「Jewel」だったのかもしれません。

00070 – GAME RELATED『Soak Game』1996(US > West > Pacific > California > Vallejo)〔1,1,1,8,4,22,2/↔︎7,↕︎39〕
00069 – T-MO『Tribal Groove Vol. 1』1997(US > West > Pacific > California > Oakland)〔1,1,1,9,4,24,0/↔︎6,↕︎40〕
00068 – MR. IROC & THE PRODUCT CLICK『The Release』2000(US > West > Mountain > Arizona > Phoenix)〔1,1,1,8,6,23,0/↔︎6,↕︎40〕
00067 – E.S.G.『Ocean Of Funk』1994(US > South > West South Central > Texas > Houston)〔1,1,0,4,5,26,3/↔︎6,↕︎40〕
00066 – BLACK & JAY『Affiliated 4 Life』1998(US > South > East South Central > Tennessee > Nashville)〔1,1,0,2,5,28,3/↔︎6,↕︎40〕
00065 – PLAYBOY 7『Whore』1999(US > West > Mountain > Nevada > Las Vegas)〔1,1,1,3,1,32,1/↔︎7,↕︎40〕
00064 – PLAYA-JU『$ Young Ass Playa $』1994(US > West > Pacific > California > Fairfield)〔1,1,1,5,2,28,2/↔︎7,↕︎40〕
00063 – LIL RIC『Deep N Tha Game』1994(US > West > Pacific > California > Richmond)〔1,1,1,6,4,25,2/↔︎7,↕︎40〕
00062 – EL KAYE『Money Makin’ Recipe』1996(US > West > Pacific > California > Richmond)〔1,1,1,3,4,28,2/↔︎7,↕︎40〕
00061 – SEVEN『Seven』1997(US > West > Pacific > California > Los Angeles)〔1,1,1,7,2,29,0/↔︎6,↕︎41〕

TOP 60〜51

続いて50位台です。

注目は60位にランクインした RAY LUV『Forever Hustlin’』です。

1995年 カリフォルニア州ヴァレーホ産、KHAYREE 率いるYBB (Young Black Brotha) Records を代表する紫の名盤ですね。

RAY LUV と言えば「Last Nite」です。『GANGSTA LUV』では、GONZO氏が RAY RUV を「一番のお気に入りのGラッパー」としたうえで、その魅力が全て詰まった楽曲として「Last Nite」を紹介しています。また『甘茶ソウル百科事典』でも、テリー・ジョンスン A/K/A ゴンゾスタ・ティ名義で、同曲のシングル盤を「メロ〜なGラップ数ある中での王様曲!!」とし、さらには「非常時に持って逃げるお皿」として『DELFONICS – La La Means I Love You』と天秤にかけるほどの寵愛ぶりです。

ただ、批判を承知で申し上げると、私はこの曲に対してそれほど特別な感情を持ったことはありません。今でこそ、派手さはないものの確かにツボを押さえた良曲だとは思うのですが、高校生で初めて聴いたときは、こうした事前情報によって期待が高まっていたせいもあってか、拍子抜けしたのを覚えています。

ここに、音楽レビューにおける言語化の壁が存在します。特に「メロウ」という概念は解釈の幅が広く、動的なものから静的なもの、ポジティブなものからネガティブなもの、洗練されたものから土臭いものといった多くの要素を包含するため、送り手と受け手の間で齟齬が生じやすいのではないでしょうか。

こうした葛藤が当サイトの存在意義・原動力になっており、「感性の湯」のように音楽がもたらす印象、想起される風景(これらも主観に過ぎませんが)にフォーカスした分類を目指すきっかけにもなっています。

その意味で、当サイト的な本作の主役は「Definition Of Ah Hustla’」一択です。タイトル通りの風景を最もわかりやすい音で定義している「夜踊陰」を代表する超名曲です。

00060 – RAY LUV『Forever Hustlin’』1995(US > West > Pacific > California > Santa Rosa)〔1,1,1,4,3,28,3/↔︎7,↕︎41〕
00059 – MURDER INC.『Let’S Die Together』1997(US > South > West South Central > Louisiana > New Orleans)〔1,1,1,9,3,25,1/↔︎7,↕︎41〕
00058 – J.D. WALKER『The “Career” Criminal』1995(US > Midwest > East North Central > Illinois > Chicago)〔1,1,1,4,1,32,1/↔︎7,↕︎41〕
00057 – GANGSTA DRE『Gang Banging Poetry: The Sequel』1995(US > West > Pacific > California > Sacramento)〔1,1,1,3,3,31,1/↔︎7,↕︎41〕
00056 – FILTHY RICH RIDAZ『Filthy Rich Ridaz』2000(US > West > Pacific > California > San Jose)〔1,1,1,5,3,31,0/↔︎6,↕︎42〕
00055 – MAFIOSOS『Take Cover』1995(US > West > Pacific > California > Richmond)〔1,1,1,6,4,26,3/↔︎7,↕︎42〕
00054 – 3X KRAZY『Stackin Chips』1997(US > West > Pacific > California > Oakland)〔1,1,1,9,2,27,2/↔︎7,↕︎43〕
00053 – MR. X『Mr. X』1996(US > West > Pacific > California > Los Angeles)〔1,0,0,7,3,33,0/↔︎4,↕︎44〕
00052 – DOOMSDAY PRODUCTIONS『Northtown Vs. Westside Compilation』1998(US > West > Mountain > Nevada > Las Vegas)〔1,1,1,2,1,33,5/↔︎7,↕︎44〕
00051 – INKOGNITO『Changing Da Game』2002(US > South > West South Central > Arkansas > Little Rock)〔1,1,1,5,2,35,0/↔︎6,↕︎45〕

TOP 50〜41

続いて40位台です。

注目は46位にランクインした PLAYYA 1000 WITH THE D’KSTER『Mo’ Drama』です。

1997年 オクラホマ州タルサ産、2016年にはまさかの来日を果たした二人組による人気名盤ですね。かつては相当なレア盤でもありました。

GANGSTA RAP において神秘性は大きな要素です。オクラホマというよくわからないエリア、読み方がわからないアーティスト名、意味深な絵ジャケという謎だらけの構成だけでも満腹なのに、なかなかどうして内容がすこぶる良いとくれば、第一発見者はさぞ興奮されたことでしょう。

本作と言えば「SOS BAND – Even When You Sleep」ネタの真夜中哀愁チル「Sunday Afternoon」が鉄板ですね。元ネタのタイトルも示しているように曲調としては夜型の印象が強いですが、これを「日曜日の午後」として表現する感性もまた、神秘性を補強する一要素でしょう。長年違和感を感じてきましたが、2016年に発表されたリメイク版の公式動画も真昼間のピースフルな雰囲気に仕上がっており、音楽の感じ方は人それぞれであり、自分の主観だけが全てではないのだということを改めて感じることができました。

なお、気になるアーティスト名について、「プレイヤ・サウザンド」「プレイヤ・千」など数々の憶測が飛び交ってきましたが、「プレイヤ・ワンジー&ザ・ディークスタ」が正解のようです。来日以降は神秘のベールが脱げ、意外と優しそうなおじさま方であることがわかり親しみが持てる反面、以前ほどの神通力は感じられなくなりました。

00050 – C-FUNK『Three Dimensional Ear Pleasure』1995(US > West > Pacific > California > East Palo Alto)〔1,1,1,10,5,27,0/↔︎6,↕︎45〕
00049 – OTR CLIQUE『Streets Deeper Than The Grave』1995(US > Midwest > East North Central > Ohio > Cincinnati)〔1,1,1,3,6,32,1/↔︎7,↕︎45〕
00048 – GANGSTA RHYME POSSE『Gangsta Rhymin’』1996(US > West > Pacific > California > San Francisco)〔1,1,1,7,4,29,2/↔︎7,↕︎45〕
00047 – PLAYYA 1000 WITH THE D’KSTER『Foe-Da-$Mill$-Ticket』1997(US > South > West South Central > Oklahoma > Tulsa)〔1,1,1,5,7,31,0/↔︎6,↕︎46〕
00046 – PLAYYA 1000 WITH THE D’KSTER『Mo’ Drama』1994(US > South > West South Central > Oklahoma > Tulsa)〔1,1,1,3,6,32,2/↔︎7,↕︎46〕
00045 – MR. IROC『Finally On The Map』1996(US > West > Mountain > Arizona > Phoenix)〔1,1,1,12,3,27,1/↔︎7,↕︎46〕
00044 – SINISTER『Mobbin 4 Life』1994(US > West > Pacific > California > Los Angeles)〔1,1,0,7,2,36,0/↔︎5,↕︎47〕
00043 – YOUNG KNOW『Takin’ It To The Next』1997(US > West > Pacific > California > San Francisco)〔1,1,1,5,4,33,2/↔︎7,↕︎47〕
00042 – SONS OF FUNK『The Game Of Funk』1998(US > West > Pacific > California > Richmond)〔0,1,1,4,3,38,1/↔︎6,↕︎48〕
00041 – DAFUNK$HUN『The Album』1996(US > West > Pacific > California > Vallejo)〔1,1,1,5,3,37,0/↔︎6,↕︎48〕

TOP 40〜31

続いて30位台です。

注目は36位にランクインした SOUTH CENTRAL CARTEL『All Day Everyday』です。

1997年 カリフォルニア州ロサンゼルス産、危険地帯サウスセントラルから放たれた人気名盤ですね。

2003年に West Up ! Records からリリースされた国内再発盤のライナーによると、本作は Def Jam からのリリースではあるものの、HAVOC が RUSSELL SIMMONS と仲違いしてしまっため、リリース時には彼らは Def Jam を離れてしまっていたそうで、本国でさえもまともなプロモーションがされなかったようです。

その後も2016年、2022年と再発され、今なお時代を超えて名盤として語り継がれている秘訣は、プロモーションという小細工を必要としない純粋な楽曲自体の素晴らしさに他なりません。

中でも「MARVIN GAYE – Let’s Get It On」ネタの星空チル「It Don’t Stop」と、「GREGORY ABBOTT – Shake You Down」ネタの星空哀愁チル「Da Bomb」は GANGSTA RAP の領域に収まらない名曲で、もはや何回聴いたかわかりません。特に後者は真昼間の印象があるネタを見事に真夜中のムードに書き換えた技アリな逸品です。

いずれも、「Gangsta’s Paradise」で COOLIO と共演したことでも有名なシンガー L.V. がヴォーカルを担っていますが、かの客演王 NATE DOGG が無機質な歌唱により主役を引き立ててきたのに対し、彼はソウルフルな歌唱により楽曲に華を添えてきました。

同じようなネタを使った作品は他にもたくさんありますが、本作が単なる名盤ではなく大名盤と呼ばれるのは、「Large Variety」の名を冠する彼によって本物の命が吹き込まれているからと言っても過言ではないでしょう。

00040 – COOP MC『Home Of The Killers』1995(US > South > West South Central > Texas > Fort Worth)〔1,1,0,7,4,34,1/↔︎6,↕︎48〕
00039 – BLOODS & CRIPS『Bangin’ On Wax』1993(US > West > Pacific > California > Los Angeles)〔1,0,1,3,2,39,2/↔︎6,↕︎48〕
00038 – SOUTHERN KARTEL『As The World Goes Round』2001(US > South > West South Central > Arkansas > Pine Bluff)〔1,1,1,5,7,34,0/↔︎6,↕︎49〕
00037 – KILO G『The Bloody City』1995(US > South > West South Central > Louisiana > New Orleans)〔1,1,1,6,1,36,3/↔︎7,↕︎49〕
00036 – SOUTH CENTRAL CARTEL『All Day Everyday』1997(US > West > Pacific > California > Los Angeles)〔1,1,1,6,4,37,0/↔︎6,↕︎50〕
00035 – MERCEDES『Rear End』1999(US > South > West South Central > Louisiana > New Orleans)〔1,1,1,4,2,37,4/↔︎7,↕︎50〕
00034 – DGSB『The Album』1995(US > West > Pacific > California > Hayward)〔1,1,1,9,5,34,0/↔︎6,↕︎51〕
00033 – SEAN T『Pimp Lyrics & Dollar Signs』1996(US > West > Pacific > California > East Palo Alto)〔1,1,1,8,3,34,3/↔︎7,↕︎51〕
00032 – COLD WORLD HUSTLERS『Iceland』1995(US > West > Pacific > California > San Francisco)〔1,1,1,11,2,33,2/↔︎7,↕︎51〕
00031 – LIL MILT『The Prophecy』1997(US > South > East South Central > Tennessee > Memphis)〔1,1,1,11,2,34,2/↔︎7,↕︎52〕

TOP 30〜21

続いて20位台です。

注目は24位にランクインした KHAYREE『The Blackalation』です。

1997年 カリフォルニア州ヴァレーホ産、YBB (Young Black Brotha) Records 創設者による最終兵器にして、黒の人気名盤ですね。

長年ベールに包まれてきた黒幕 KHAYREE の正体は1980年台後半から活動するR&B畑出身のプロデューサーで、作曲から演奏までをこなすマルチプレイヤです。本作では初めてその御尊顔が公開され、当時、好事家界隈では大きな反響を呼んだようですね。

本作は、1993年に彼が立ち上げた YBB Records の集大成とも言える内容で、MAC DRE, RAY LUV, DUBEE, SHIMA といったレーベルメイトを中心とした客演陣が彼の世界観を見事に表現しています。

「Pass Days」の冒頭で「Music Is Like A Movie」というセリフが出てきますが、彼は映画音楽にも多数携わってきたということもあって、冒頭から最後までまるで映画を見ているかのような写実的な世界観が広がります。本当に全曲紹介したいほど素晴らしいのですが、特に RAY LUV と LINK CREW による真夜中哀愁ドライブ「It’s Alright」はこの系統(夜乗陰)の楽曲の中で最高峰と断言できます。

少し大袈裟かもしれませんが、かの DR. DRE の歴史的名盤「Chronic」や「2001」が東京ドーム後楽園ホールのスターなら、本作はその地下闘技場の手練れの名手と言えるでしょう。ルール無用・無差別級の世界で磨かれた音は全てが鍛錬されており、深い深いマイナーG-RAP界への入門としてこれ以上の作品はありません。

逆に言えば、沼にはまる覚悟がなければ、安易に手を出すべきではない危険な代物とも言えるでしょう。

00030 – MAC & A.K.『Westbound (For Riders Only)』1996(US > West > Pacific > California > East Palo Alto)〔1,1,1,12,6,31,1/↔︎7,↕︎53〕
00029 – K-DEE『Ass, Gas Or Cash (No One Rides For Free)』1994(US > West > Pacific > California > Los Angeles)〔1,1,1,9,5,35,1/↔︎7,↕︎53〕
00028 – THA M.O.B.B.『Never Trust Them Ho’S』1995(US > West > Pacific > California > Oakland)〔1,1,1,11,3,35,2/↔︎7,↕︎54〕
00027 – D.T.L.『Dyin’ 2 Live』1997(US > West > Pacific > California > Oakland)〔1,1,1,5,4,40,2/↔︎7,↕︎54〕
00026 – BALL PLAYER『Ghetto Life』1997(US > West > Pacific > California > Oakland)〔1,1,1,5,7,37,2/↔︎7,↕︎54〕
00025 – B.G. KNOCC OUT & DRESTA『Real Brothas』1995(US > West > Pacific > California > Compton)〔1,1,1,11,3,38,0/↔︎6,↕︎55〕
00024 – KHAYREE『The Blackalation』1997(US > West > Pacific > California > Vallejo)〔1,1,1,3,2,44,4/↔︎7,↕︎56〕
00023 – COOP MC『Currency』1996(US > South > West South Central > Texas > Fort Worth)〔1,1,1,5,5,41,2/↔︎7,↕︎56〕
00022 – YOUNG “D” BOYZ『Sellin’ Cocaine As Usual』1994(US > West > Pacific > California > Vallejo)〔1,1,1,3,4,38,10/↔︎7,↕︎58〕
00021 – LIL ½ DEAD『The Dead Has Arisen』1994(US > West > Pacific > California > Long Beach)〔1,1,1,7,5,44,0/↔︎6,↕︎59〕

TOP 20〜11

最後に10位台です。

注目は20位にランクインした FOESUM『Perfection』です。

1996年 カリフォルニア州ロングビーチ産、かつて同郷の213(SNOOP DOGGY DOGG, NATE DOGG, WARREN G)とシノギを削ったとも言われる伝説的グループによる人気名盤ですね。

前述の KHAYREE が「マイナーG-RAP沼への招待状」だとするならば、本作はいわば「ラップアイランドへのチケット」でしょう。DJ GLAZE による楽曲は垢抜けて耳触りが良く、GANGSTA RAP はおろかラップミュージック未経験者にもアプローチできるポップさを兼ね備えています。そのせいか、編集方針に合わなかったのか、これほどの名盤にもかかわらず『GANGSTA LUV』には掲載されていませんね。

ロングビーチの風を感じられる楽曲群はどれも「パーフェクト」な仕上がりですが、特に DOVE SHACK の BO-ROCC を迎えた潮風漂う夕暮れ哀愁チル「In The Wind」、「ISLEY BROTHERS – Make Me Say It Again Girl」ネタのクリスタルサンセットチル「Listen To The Sound」、昼下がりの爽やかな「Some Things Never Change」の3曲は楽園級の名曲です。真夏の熱海サンビーチで聴くと何度でも逝けますよ。

とかく日本のヒップホップ産業では古くからハードコア信仰のような風潮があり、耳馴染みが良いポップなアプローチを卑下する傾向がありましたが、様々な文化的背景に折り合いをつけ万人受けする1つの楽曲として成立させるポップの手法は実はとんでもなく高度な技術であり、それを正当に評価できないうちは真の文化的成熟には程遠いのだと思います。

00020 – FOESUM『Perfection』1996(US > West > Pacific > California > Long Beach)〔1,1,1,7,5,44,0/↔︎6,↕︎59〕
00019 – E.S.G.『Sailin’ Da South』1995(US > South > West South Central > Texas > Houston)〔1,1,0,6,3,46,2/↔︎6,↕︎59〕
00018 – Z-RO『Look What You Did To Me』1998(US > South > West South Central > Texas > Missouri City)〔1,1,0,7,7,38,6/↔︎6,↕︎60〕
00017 – G-SLIMM『Fours Deuces & Trays』1994(US > South > West South Central > Louisiana > New Orleans)〔1,1,1,15,4,37,2/↔︎7,↕︎61〕
00016 – YOUNG DRE『Hated By Many』1997(US > West > Pacific > California > Los Angeles)〔1,1,1,3,3,49,4/↔︎7,↕︎62〕
00015 – BOOKIE『Stressin』1999(US > West > Mountain > Arizona > Phoenix)〔1,1,1,9,6,43,1/↔︎7,↕︎62〕
00014 – LEX A.D.『Silenced By The Greed』1997(US > West > Pacific > California > Oakland)〔1,1,1,11,4,45,1/↔︎7,↕︎64〕
00013 – MASS 187『Krooked City』1997(US > Midwest > West North Central > Missouri > Kansas City)〔1,1,1,7,2,53,0/↔︎6,↕︎65〕
00012 – BIG MACK『A Better Way』1995(US > West > Pacific > California > San Francisco)〔1,0,1,9,4,47,3/↔︎6,↕︎65〕
00011 – LEGEND MAN『Pressure & Pain』1997(US > South > West South Central > Louisiana > New Orleans)〔1,1,0,8,2,53,2/↔︎6,↕︎67〕

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ATAMIC DOGG

熱海出身の元DJ。2000年頃から掘り続けてきた"G"な音楽を紹介します。GANGSTA RAP、SOUL、FUNK、R&B、JAPANESE CITY POP 等、定番から知られざる名曲まで惜しみなく公開していきます。掘れば掘るほど湧き出る"G"の温泉を、ごゆっくりお楽しみください。
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